「血圧」とは、心臓から送り出された血液が血管を流れるときに血管の壁にかかる圧力のことです。ポンプのように収縮と拡張を繰り返す心臓は、収縮するときに血管内の圧力がもっとも高くなります。
健康診断などでもよく耳にする血圧の話。特に気になるのが「高血圧」ではないでしょうか?
まずは「高血圧を予防する生活習慣」について、今現在どこまで自分ができているかをチェックしてみましょう!
皆さんはいくつ当てはまりましたか?
高血圧とは、血圧が正常値の範囲を超えて、高い数値のまま続く状態を指します。
病院で血圧を計測した場合、収縮期(最高)血圧/拡張期(最低)血圧は140/90mmHg以上、ご自宅の場合は135/85mmHgの場合と定義されています。
血圧がぐっと上がってしまう主な原因は、体質や加齢以外に不健康な生活習慣にあります。食事、運動、睡眠、喫煙など、日常的に何気なくしている行動が、実は血圧に大きく影響を与えているのです!
血圧を下げるためには、やはり「生活習慣の改善」が必須。生活の見直しは、高血圧とは切っても切れない関係にあります。
「塩分を減らせばいいのでは?」という声もよく耳にしますが、それほど単純な話でもないのです。
生活習慣の中でも、自律神経に影響を与える睡眠時間とその質、また塩分に直接かかわる食事の取り方なども重要なポイントになります。
そこで、睡眠や食事を例に、なぜ生活習慣の改善が高血圧の予防・改善に必要なのかをお話しします。
ずばり!睡眠時間が少ないほど高血圧になる割合は増加します。
通常、寝ているときは副交感神経が優位になっているため血圧は低くなります。
ところが、睡眠不足によって自律神経である交感神経が必要以上に緊張状態になると、夜間の血圧が日中と同じ値にまで上昇する可能性があるのです。
睡眠不足と高血圧との密接な関係性は、統計データからも明らかであり、1日の睡眠時間が不足している人は、十分な睡眠をとっている人に比べて血圧が異常値である割合が1.27倍高くなっていました。
睡眠 × 血圧
生活習慣の代表格である「食事」、「運動」、「睡眠」の繋がりは深く、より良い睡眠を得るためには、食事をゆっくり摂り、適度な運動をすること。それが血圧の低下へと繋がっていきます。
一般的にベストな睡眠時間は6時間~8時間くらい。
血圧が気になりだしたら、まずは睡眠時間を見直してみましょう。
思い切ってベッドや枕などを変えてみたり、照明や香りに気を配ってみたり、良い睡眠をとることへの意識を高める工夫をしてみるのもおすすめです。
食事において塩分を減らすことは、高血圧の改善には重要なポイント。
食べ物もそうですが、食べ方はどうでしょうか?
現代人である私たちにとって、もっとも改善した方がよい点は「早食い」です。
食べるペースが早いとBMIの増加に繋がり、血糖値の急激な上昇に加えて血圧も高くなることから、食事と高血圧の関連の深さが分かります。
忙しいからなどという理由で早食いを続けていると、心血管疾患(狭心症や心筋梗塞など)のリスクが高まるという報告もあり、統計データを見てみると、驚くことに人と比べて「食べるペースが速い」人は「食べるペースが遅い」人に比べて、1.26倍も血圧が異常値である割合が高くなっているのです!
早食い × 血圧
日頃の食習慣を振り返り、食事からの塩分摂取などが多くならないように栄養バランスを考えた食事を摂ることが重要です。
もちろん、食べ方もいつもよりゆっくりペースで。よく噛んで味わいながら食べることを習慣化すること。
高血圧を解消させるために、適切な食事の仕方を積極的に取り入れていきましょう。
健康診断などで指摘されることのある血圧値ですが、実は3つに分類することができます。
「正常血圧」に加え、高血圧の予備軍として「正常高値血圧(高血圧の一歩手前。注意が必要なレベル)」と「高値血圧」があることを知っておくと、体質改善にも取り組みやすくなるでしょう。
具体的には、病院で血圧を計測した場合、130~139/80~89mmHgが高値血圧、120~129/70~79mmHgが正常高値血圧です。
高血圧の基準から10mmHgずつ引いた数値が正常値と覚えておきましょう!
成人における血圧値の分類(mmHg)
分類 | 診察室血圧(mmHg) | 家庭内血圧(mmHg) | ||
---|---|---|---|---|
収縮期血圧 (最高血圧) |
拡張期血圧 (最低血圧) |
収縮期血圧 (最高血圧) |
拡張期血圧 (最低血圧) |
|
正常血圧 | < 120 かつ < 80 | < 115 かつ < 75 | ||
正常高値血圧 | 120~129 かつ/また < 80 | 115~124 かつ/また < 75 | ||
高値血圧 | 130~139 かつ/また 80~89 | 125~134 かつ/また 75~84 | ||
Ⅰ度高血圧 | 140~159 かつ/また 90~99 | 135~144 かつ/また 85~89 | ||
Ⅱ度高血圧 | 160~179 かつ/また 100~109 | 145~159 かつ/また 90~99 | ||
Ⅲ度高血圧 | ≧ 180 かつ ≧ 110 | ≧ 160 かつ ≧ 100 | ||
(孤立性) 収縮期高血圧 |
≧ 140 かつ < 90 | ≧ 135 かつ < 85 |
「高血圧予備軍」であり、食塩摂取量を1日6g未満に制限し、食物繊維の多い野菜や果物などを積極的に摂ることが推奨されています。
また、適正体重の維持や運動・身体活動量を無理のない範囲で増やすこともポイントです。
食事や運動などの生活習慣の改善に加えて、医師の指示に従った「降圧薬治療」が必要になることがあります。血圧手帳を活用して日々の血圧管理を行いましょう。
高血圧の場合、食事は腎機能などの数値も見ながら食塩摂取量を1日3gまで制限するケースも。運動なども含めて、医師の指示を仰ぐことをおすすめします。
もしも血圧が朝も夜も高い数値のままという場合は、ホルモンの病気が隠れていることもあるので油断せずに注意しましょう。
WHO(世界保健機関)による基準では100/60mmHg以下を低血圧と定めています。
頭痛やめまいなどの症状が現れたときは、病院の受診も検討しておきましょう。
基本的に低血圧の場合は塩分が足りていないことが多いので、およそ1日10g程度までの塩分摂取やこまめな水分補給を心掛けておきましょう。
また急に出立ち上がるなど、体を動かすことで立ちくらみを起こすこともあるため注意が必要です。
【参考文献】
【執筆者プロフィール】井林 雄太 (いばやし・ゆうた)
1984年生まれ、2008年大分大学医学部卒。日本内科学会認定内科医、日本内分泌内科専門医、日本糖尿病内科専門医の資格を保有。現在は医師業務の傍ら、正しい医療情報を伝える啓発活動も市民公開講座など通して積極的に行なっている。
【ホームページ】
福岡ハートネット病院:https://heartnet-hp.jp/
2025.4.17 作成